開講報告

平成22年度ポストグラデュエートコース 1コース

「歯科疾患における咬合の重要性」

平成22年8月8日(日曜日)天満橋学舎にてポストグラデュエートコース2コースが多数の同窓生に加えて、学外の卒業生も参加し盛況に開催された。東大阪市開業の本多正明先生と、西宮市開業の米澤大地先生が「歯科疾患における咬合の重要性」というテーマでご講演された。本多正明先生は本学18期卒業生で、我が国の臨床歯科界全体に多大なる貢献をされ、大きな足跡を遺されてきた先達のひとりである。一方米澤大地先生は、長崎大学出身の新進気鋭の臨床家である。「矯正・歯周病・補綴・インプラント」すべてを自身でこなすスーパーGPと言える方で、現在は本多正明先生に師事されている。

本多先生は、自身の卒業後から現在まで歩まれてきた道のりと、その時々の歯科界の状況を合わせて紹介されるところから講演を始められた。本学卒業後わずか3年目にUSC(南カリフォルニア大学)でDr.レイモンド・キムと出会われて、以後Dr.キムがお亡くなりになるまで師事された。初めて訪れた1970年代の米国には、「マルチ・ディスプリナリー」という言葉が存在し、各分野の専門医が相互に連携し治療にあたる、現在わが国で「インター・ディプショナリー・アプローチ」として知られる治療アプローチがすでに存在していたそうである。
そして「補綴医は歯周病を学ぶべき」また「歯周病医は咬合を学ぶべき」と指導されたそうだが、これは現在「炎症のコントロールと力のコントロールの重要性」として広く認識されているところでもある。このようなエピソードを通して、歯科界では往々にしてある種の流行のようなものが存在するが、本質的なものは不変であること、その一つが咬合であると述べられた。また咬合は概念であるとし、それを理解するために必要な事柄を診断から治療手順を示すとともに、豊富な長期経過症例写真を交えながら丁寧にわかりやすくお話しいただいた。

米澤先生も自身の道のりを紹介し、当日数多く参加していた若い歯科医師にメッセージを送ることからお話をはじめられた。本多先生の概念を、日常臨床においてどのようなアプローチで実践しているかについて、診断例別に順を追って示された。米澤先生が示された症例は、矯正治療のみならず歯周治療・補綴治療・インプラント治療・審美治療のいずれにおいても非常に高次元で見事に融合しており、参加者は一様に驚いた様子だった。

この講演を通して、すべての歯科治療において、その治療結果の永続性のために咬合が根幹をなすことを再確認することができた。最後に本多先生が言われた”Back to the basic, go for the future”の言葉が参加者の胸に刻まれたことと思う。

PGC委員 小柳 良久