開講報告

令和元年度ポストグラデュエートコース 2コース

健康長寿と口腔健康を守る口腔細菌叢~口腔細菌フローラのトレンドを知る~

 令和元年6月2日(日)、ポストグラデュエートコース2コースが本学天満橋学舎で開催されました。
 今回は、昨年、九州歯科大学より本学細菌学講座主任教授に着任されました沖永敏則先生に「健康長寿と口腔健康を守る口腔細菌叢~口腔細菌フローラのトレンドを知る~」というテーマでご講演頂きました。
 私を含めて臨床医である先生方にとって、基礎分野である細菌学は日頃、触れる機会は少なく、やや難解な印象でしたが、基礎的な知識から論文報告まで幅広い分野を非常に分かりやすく講義頂きました。
 近年、体に存在する常在細菌叢、特に腸内細菌叢がヒトの健康において重要な役割を果たしていることが明らかになっていますが、口腔内にも口腔微生物叢(口腔フローラ)が存在します。私が学生時代に学んだ細菌学とは時代が変わり、次世代シーケンサーを使った解析によって、個々の病原細菌だけではなく常在細菌叢のバランスや細菌同士のコミュニケーションが重要であることが分かっています。口腔環境は特殊性が強く、舌や唾液中、歯面、歯肉溝など部位によって特有のフローラを形成しますが、口腔細菌は一見関係のないように思われる大腸癌や膵癌、アルツハイマー病、脳内出血などの全身疾患、さらにはフレイルとも関連することを最新の論文を含めてご教示頂きました。また、実際に本学細菌学講座で行われている菌叢を変えるための酵素タブレットの開発など、今後の臨床応用への可能性まで非常に分かりやすく説明して頂きました。
 当日は、本学卒業生のみならず他大学出身の先生方も含めて33名の受講生が講習を修了致しました。半日ではありましたが、非常に濃密な満足度の高いコースとなり、口腔細菌の可能性を感じる1日となりました。

(PGC委員 大57回 渡辺 昌広 記)