第1回
2025年を見据えて、次代の歯科医療に求められるもの〜異分野との連携〜
平成27年5月24日(日) 大阪歯科大学 創立100周年記念館
5月24日(日)大阪歯科大学同窓会特別講演が100周年記念会館で開催されました。
当日は100名を超える受講者にご参加いただきました。10年後の2025年、必ず訪れる2025年問題に対して、歯科医師がどうやって関わっていくのかを異分野の連携という視点から語っていただきました。
トヨタ記念病院 口腔外科部長の牧野真也先生は、医科歯科連携からの本当の意味でのチーム医療の実践を、地域包括ケアの観点で解説していただきました。たとえ個人開業であっても連携は可能であり、TOYOTAを母体とする戦略的医療施設でのデータは納得いくものばかりでした。
資生堂 新規事業開発室 医学博士の池山和幸氏は、リーディングブランドとしての化粧品販売から医療介護の分野に参入し、科学的根拠に基づいた研究実績をあげられ、専門分野だけの発想では到底想像もつかない方法で、介護者のADL指数の向上に貢献できることを教示していただきました。
「一瞬も、一生も美しく」資生堂のコンセプトは人として生きるために必要なエッセンスが詰まっていると感じさせるものでした
Willmake143 代表の田中健児氏は、北は北海道から南は沖縄まで、幅広く医院経営について、アドバイスをしてきた実績から未来を読み解き、どんな歯科医院が求められているのかを示するものでした。特に「待合室」の可能性についてのお話は目から鱗がでる思いで、明日からでもすぐに実践できることばかりでした。
今回、みなさんが楽しそうに受講しておられる姿を拝見し、本当に嬉しく思います。
今後も大阪府同窓会青年部で、若手向けの企画を打ち出していきますので、第2回の「三叉神経損傷は治療すべきか?」も是非ご受講ください。
第2回
三叉神経損傷は治療すべきか?
平成27年8月 8日(土) 大阪歯科大学 創立100周年記念館
例年にないうだるような猛暑の中、今年度の第2回学術部特別講演が創立100周年記念館大講義室が8月8日(日に開催された。
瀬尾教授の抄録によると、口腔外科手術や局所麻酔などにより三叉神経はしばしば損傷を受ける。これらは口腔顔面領域の感覚喪失や神経障害性疼痛に加え、「しびれ」という異常感覚をも生じさせる。しかしすべてが治療対象となるかという問いには、Noと答える。これは単純なNoではなく、「○○による治療」の必要性を理解して欲しいとのご発言であった。まず、神経損傷から再生に関する機序が解説され、とくにニューロンの成長に関与するBDNF(神経栄養因子)の発現様相が重要であり、その他の因子(NGF、NT3)についても最新データに基づいて説明された。また、神経再生時には神経腫が発生するが、その際の炎症抑制も非常に重要なテーマで、さらに症状の変化を詳細に捉える重要性も提唱された。近年、MRIを応用したニューログラフィによる可視化も可能であり、評価に関する最新の研究に驚愕する次第であった。
治療に関しては瀬尾教授が熱望しているガイドラインが学会レベルで依然整備されておらず、手術療法をはじめとする術式の確立に腐心されている様子がうかがえた。ただ、患者QOL向上の目的などから、モントリオール宣言の積極的な採択により、全人的な医療に取り組んでおられ、われわれ臨床医も十分見習わなければならないものと思われた。
全体で3時間という長丁場の講演であったが、基礎的研究から臨床経験に基づいて詳細に解説していただき、非常に有意義な講演会であった。講演終了後はプラザ14での懇親会も開催され、参加された会員からの質疑応答に快くお答えいただく瀬尾教授に深く感謝し、大阪歯科大学同窓会学術部の夏の一大イベントが終了した。